ドローンは何故ドローンと呼ばれているかや、どうして飛行するのか考えたことはありますか?
日本では首相官邸にドローンが墜落したことを機に、ドローンという言葉が世間に広まってきましたが、いつからドローンという言葉が使われているのでしょうか。
またドローンはどうして飛行できるのでしょうか。
この記事ではドローンの歴史や飛行する仕組みについてご紹介していきます。
ドローンの歴史
まずはドローンの歴史についてですが、1930年代から無人航空機(ドローン)を遠隔操作する試みが行われていて、その用途は軍事用として使われていました。
第二次世界大戦ではなんと1万機以上の「ターゲットドローン(射撃訓練用標的飛行機)」が製造されていたそうで、現在では偵察機などに用途を変えて各国で利用されているそうです。
有名なものでは1995年に開発された「RQ-1プレデター」というものがあり、最初にドローンを開発した人は軍事機密により非公開となっています。
しかし軍事用と聞くと今ではあまり関係ないように思えますが、実は今でもかなりの数のドローンが軍事用として使用されていて、その数は全体の9割以上と言われています。
ですが最近では民生用のDJIのドローンが中東のテロに使用されるなど、DJIはテロ防止の為、イラク・シリアの紛争地域全域をGPSにより飛行が出来ないようにしていますが、技術や知識がある人はこの制御すら解除し飛行させてしまう事も出来るでしょう。
現在はDJIがドローン業界のトップに立っていますが、民生用ドローンに関してはフランスのParrot社が開発した「AR.Drone」が機によって広まっています。
AR.DroneはiPhoneやiPadで操作しますが、今では当たり前のようにある機能ですが、当時は革新的な機能で、ラジコン業界やガジェット業界を騒がせました。
スペックも6軸ジャイロや超音波センサーなど、現在のドローンと比較しても見劣りしません。
ちなみに日本では1970年代から産業用のドローンの実用化が進められています。
ドローンの名前の由来
ドローンの簡単な歴史が分かったところで、ドローンは何故ドローンと呼ばれているのでしょうか。
ちなみにみなさんドローンが実際に近くを飛んでいる音を聞いたことはありますか?
ドローンのプロペラ音と風を切る音はミツバチの雄蜂の羽音によく似ています。
そのことからミツバチの雄蜂(英語でドローン)と呼ばれるようになったと言われています。
ですが名前の由来については諸説あり、ターゲットドローン(射撃訓練用標的飛行機)が「クイーン・ビー」(女王蜂)と呼ばれていたことが転じてドローンと呼ばれるようになったという説もあります。
【ドローンの定義】どこまでがドローン?
ドローンの定義は航空法で定められており
「飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船であって構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦により飛行させることができるもの(200g未満の重量(機体本体の重量とバッテリーの重量の合計)のものを除く)」
となります。
難しい言葉ばかりですが簡単に言うと「空を飛べるが人が乗って操縦しない機体」で「遠隔操作や自動操縦ができるもの」です。
これに当てはまるものを航空法では「ドローン(無人航空機)」と言います。
ですのでプロペラが無くても上記に当てはまれば「ドローン」と呼びます。
ですが最近ではこの定義に当てはまらないものでもドローンと呼んでいたりと、この定義が通用しなくなっています。
人が乗れるドローン・・・・それはヘリコプターでいいのでは?
水中を移動するドローン・・・・もう空を飛行すらしていません。
【ドローン以外の名称】
ドローンには他の名称があり「マルチコプター」とも呼んだりします。
マルチコプターとはヘリコプターの一種で、3つ以上のローターを搭載した回転翼機とことです。
マルチコプターにも種類があり、4枚プロペラのものを「クアッドコプター」、6枚プロペラのものを「ヘキサコプター」8枚プロペラのものを「オクトコプター」と呼びます。
ドローンが飛行する仕組み
ドローンが飛行するのはプロペラが回転しているからとわかりますが、自由に移動できることや、何故プロペラが回転すると飛ぶのかそこまで考えた事はありますか。
プロペラが回っているから浮かぶとはわかりますが、では何故プロペラが回ると浮かぶのでしょうか。
それはプロペラが回転すると上に持ち上げようとする力「揚力」が発生するからです。
揚力は翼(プロペラ)の上面を流れる気流の速さが速いほど、また角度がつくほど(限界値はあります)大きくなります。
下記図は飛行機の翼で揚力を表したものですが、イメージ的にはこんな感じです。
この揚力が各プロペラにあると思ってください。
ドローンに限らず飛行するものはこの揚力によって、浮かぶことができています。
ではドローンが浮かぶ仕組みがわかったところで、どうやって自由自在に動いているのでしょうか。
飛行機は翼の角度を変えて揚力を調整して飛行し、ヘリコプターもプロペラの角度や後ろに付いている小さいプロペラでバランスを取って飛行しています。
しかしドローンはプロペラの角度が変えれず、またヘリコプターみたいに後ろにプロペラもありません。
ではドローンはどのようにして飛行しているのでしょうか?
答えは「各プロペラの回転数を変えている」です。
ドローンの多くは下記画像のように4つのプロペラが付いています。
前に進みたい時は後ろのプロペラの回転数を上げて、後ろに進みたい時は前のプロペラの回転数を上げています。
しかし気づいている方もいると思いますが、ただ回転数を上げるだけでは上手く飛行してくれません。
結局はプロペラの回転数を上げようと一方向にしか力が加わっていませんので、一方向に早く進むか遅く進むかでの違いしかありません。
というか浮かぶことも難しいでしょう。
ではどうしているのかというと・・・
時計回りと反時計回りのプロペラを交互に付けて力を打ち消しあい、自由に飛行できるようになっています。
ですのでドローンは基本偶数枚のプロペラで作られています。
ではドローンが飛行する仕組みがわかったところで、ドローンにはどんな機器が搭載されているのでしょうか。
ドローンに搭載されている機器
ドローンには沢山の種類がありますが、まずはどのドローンにも搭載されている基本的なものをご紹介致します。
- モーター:プロペラを回すための機器で、ある意味ドローンのコアとも言える部分です。本格的なドローンにはパワーのあるブラシレスモーターが使用されています。
- バッテリー:各機器に電力を送る役目を果たし、携帯電話にも使用されているLiPoバッテリーを使用します。特徴としてはエネルギー密度が高く、大容量の電気を蓄えることができ出力が大きいことです。
- FCS(フライトコントローラーシステム):機体内部にある受信機が制御信号を受け取り、モーターへ信号を送る機器です。様々なセンサーの信号を処理し機体を制御する役目も果たします。
- ESC(エレクトリックススピードコントローラー):FCSから信号を受け取り、モーターの回転数を制御する装置です。
- PDB:(パワーディストリビューションボード):バッテリーの電力を各機器に供給するための装置です。
- ジャイロセンサー:回転や向きなど傾きを計測するセンサーで、これによりドローンが姿勢変化を検知し安定した飛行を保つことができます。
以上が基本的なもので、これに+αで様々なセンサーなどが搭載されています。
【ドローンに搭載されている機器】GPSセンサー
アメリカの「GPS」またはロシアの「GLONASS」(両方合わせてGNSSセンサーとも言います)の衛星の電波を受信し、それらを総合してドローンの正確な位置(緯度・経度・高度)を算出し、風が吹いて動いてしまっても元に戻そうとドローンが自動で制御してくれるからです。
このGPSの電波が途切れてしまうと、たとえ風に強そうな大きなドローンでもふらふらとした飛行になってしまいます。
今では1万円程度のドローンでもGPSセンサーが搭載されているものもありますが、しかしGPSセンサーは万能という訳ではなく、室内やトンネルなど閉鎖された場所ではGPSを受信することができません。
ですがドローンにはGPSセンサー以外にも沢山のセンサーが付いており、GPSが受信できなくてもある程度の飛行は保ってくれます。
【下記記事にてGPSについて詳しくご紹介しています】

【ドローンに搭載されている機器】赤外線センサー
赤外線センサーは物体が放射する赤外線を「温度」として感知し映像にするので、周りの光の影響を受けることがなく、昼でも夜でも使用することができます。
これにより周囲の障害物を検知し、障害物にぶつかりそうになった時などに自動で止まってくれます。
低価格のドローンに搭載されている事はありませんが、本格的なドローンには搭載されているものもがあります。
【ドローンに搭載されている機器】超音波センサー
超音波センサーは超音波を対象物に向けて発射し、その反射波を受信することにより対象物の有無や距離を感知することができます。
主に地上付近での高度制御に使用されていて、機体の底面に搭載されています。
【ドローンに搭載されている機器】気圧センサー
気圧センサーはドローンの高度を感知するセンサーです。
高度による気圧差を感知し、ドローンの高度を測定して高度を維持してくれています。
地上に近い場所や、急な突風、気圧の変化が起こるとうまく作動しない場合があります。
今では自動でホバリングを行うために、低価格のドローンにも搭載されているのが当たり前になってきています。
【ドローンに搭載されている機器】磁器方位センサー
磁器方位センサーはいわゆるコンパスで、ドローンがどの方角に向いているか感知します。
コンパスは飛行させる場所によって磁器の影響を受けるので、コンパスキャリブレーションという調整を行うことがあります。
コンパスキャリブレーションは最初に一度行えば基本的に大丈夫ですが、鉄塔など磁気の影響が大きい場所に行ったときや、磁気が変わる北から南への半球の移動となると必ず行わなければいけません。
【ドローンに搭載されている機器】ジャイロセンサー
上記でも紹介したジャイロセンサーはドローンが傾いた角度を感知するセンサーです。
水上では船はぐらぐらと揺れますよね。
小さな船だと波が来たり、乗り方によって簡単にひっくり返ってしまいます。
ひっくり返らない為にもどれだけ傾いたか検知し、元に戻す制御が必要になります。
そのためどれくらい傾いたか?傾いた速度はどれくらいかをジャイロセンサーが検知しています。
スマホでもジャイロセンサーが使用されており、スマホを横にすると画面が横向きになる。
これもジャイロセンサーで傾きを検知し行われているものです。
ジャイロセンサーの歴史
ジャイロセンサー自体が発明されたのは1817年で、今は機械式ジャイロセンサーと呼ばれています。
ジャイロセンサーを使用した飛行機の操作の自動化の歴史は意外に古く、飛行機の発明からわずか11年後の1914年にローレンス・スペリーによって実現されています。
このときの飛行機は固定翼機(羽が動かない飛行する物)でしたが、ドローンと同じ回転翼機(羽が動く飛行する物)と操縦技術は1940年に確立されました。
この時点で使用されているジャイロセンサーは機械式ですが、現在のドローンには振動式ジャイロセンサーが使用されています。
ジャイロセンサーの種類
ジャイロセンサーには先ほど述べた通り「機械式ジャイロ」「振動式ジャイロ」と「光ファイバージャイロ」の3種類があります。
まずは機械式ジャイロセンサーですが
回転しているコマが姿勢を変えない性質を利用し傾きを感知します。
次に振動式ジャイロセンサーですが
回転により検出アームの振動運動量が振動に対して非対称に変化するので、その変化量で傾きを感知しています。
スマホなどにも内蔵され広く普及され、ドローンに使用されるジャイロセンサーも振動式が主流となっています。
最後に光ファイバージャイロですが
光ファイバージャイロは巻いた光ファイバーの両端からレーザー光を入れて、左回りの光と右回りの光の干渉を利用し傾きを感知しています。
地球の自転や公転までわかるほど高い精度をもっています。
しかし小型化が難しく高価なため、大型のドローンや潜水艦などに使用されています。
ジャイロセンサーが無いとドローンはどうなる?
ジャイロセンサーが無いとドローンは平行を保つことができません。
ジャイロセンサーが搭載されていると風が吹いてドローンが傾いたとしても、自動で地面に対して平行に戻してくれます。
ですがジャイロセンサーがないと傾いたままで、自分で傾いた方向の逆の舵を切らないと元に戻りません。
またドローンは進んでるいる方向に傾き(右に進むと右に傾く)、スピードを上げるほど傾きが大きくなります。
ですのでスピードを上げすぎると傾き過ぎてひっくり返ってしまいます。
このようにひっくり返らないようにもジャイロセンサーが機能しています。
またレース用のドローンではジャイロセンサーをオフにする機能もありますが、基本的には危ないのでジャイロセンサーはオフにすることができません。
ジャイロセンサーが検知しているのは厳密には傾きではない
ここまで傾き、傾きと言っておきながら何を言ってるのだと思いますが、厳密には「角速度」を感知しています。
角速度とは「物体が回転する速度、すなわち単位時間あたりの角度移動量」で、どれだけ角度が移動したかを測っています。
本当の意味で傾きを測っているのは「加速度センサー」で、ドローンではこの2つを合わせて6軸センサー等と呼ばれていて、ジャイロセンサー3軸、加速度センサー3軸の合計で6軸です。
軸の向きですが人の動きで例えると、前転する向きが「ピッチ軸」、側転する向きが「ロール軸」、垂直方向の回転(ぐるぐるバットの向き・・・で通じるかな)が「ヨー軸」となります。
【ドローンに搭載されている機器】加速度センサー
加速度センサーはドローンの速度の変化を感知するセンサーです。
ジャイロセンサーと組み合わせて効果を発揮します。
組み合わせて機体が傾いた場合反対の向きに制御し、ドローンを並行し安定したホバリングを保ってくれます。
ドローンの由来や仕組みについて まとめ
ドローンは年々進化し新しい機能が増えていったりと、昔のものと比べ全く別物になろうとしています。
一昔前ですと赤外線センサーによる障害物検知などありませんでした。
そのうちこのドローンを飛行させる仕組みすら全く変わってしまうかもしれませんね。
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